災害に強くて快適な、未来を担う建築とは?


日本は、毎年のように台風や豪雨に見舞われます。

最近の大型台風や豪雨では、建物に飛来物が当たったり窓ガラスが割れたり、屋根から雨水が吹き込んだりといった被害が頻出しています

そのほか、市街地のオフィスビルや公共施設が停電・断水・通信断などに陥るケースも報告されています

万が一のトラブルを防ぐには、建物を構えたり修繕したりする段階から風や雨、停電などに対する備えを設計に取り込むことが欠かせないでしょう

建物を長く守るためには、強風や豪雨への備えについて、特別な対策というよりも設計の一部として考えることが大切です

そこで今回は、丈夫な建物をつくる上で鍵を握る「パッシブデザイン」と「アクティブデザイン」の両方の側面から、災害に強い建築づくりの考え方を解説します。

災害から建物を守る鍵となるパッシブデザインとは?

パッシブデザインとは、光・風・熱・水といった自然エネルギーを活かして快適性と省エネルギーを両立する設計手法です。

例えば、風向きを考慮した設計により、台風時の被害を防ぎながら平常時は自然換気による快適な空間を実現できます。

また、建物の向きや形をわずかに調整するだけでも、壁面にかかる風圧を変化させることでダメージを大きく軽減できます

さらに、屋根の勾配や開口部の位置などの形状の工夫一つでも、災害対策につなげることが可能です。

構造の強度だけに頼らず、環境の力を読み解くことこそ公共施設やオフィスビルなどが長く安全に機能し続けるためのポイントといえるでしょう。

木材の「しなやかさ」は、防災にも強い味方に

災害に強い建築というと、鉄筋コンクリートや鉄骨を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、損傷を最小限に抑えるという点では、木材の特性も有効です。

木材は軽量で、しなるように力を逃がす性質を持っています。

また、自重が軽いため地震や強風時の荷重を抑え、被害後の修復もしやすいという利点も挙げられるでしょう。

近年では鉄骨やコンクリートと木材を組み合わせた構造も増えており、強さと柔軟さの両立を目指した建物も多いです。

たとえば、公共施設の中には、県産杉と鉄骨を組み合わせることで軽量化と構造の安定性を実現したものもあります。

こうした木材利用は、環境負荷を減らすだけでなく、防災や復旧の面でも大きな可能性を持っているといえます

公共施設やオフィスの設計においても、「強さ」だけでなく「しなやかさ」で守るという発想が、これからの時代に求められているのではないでしょうか。

自然の力に加えて技術の力で災害に強く”止まらない”建物を

パッシブデザインが“自然を活かす設計”だとすれば、アクティブデザインは“技術で支える設計”です。

両者を組み合わせることで、台風による停電や断水といった非常時にも建物が機能を維持しやすくなります。

例えば、屋上に太陽光発電設備や蓄電池を備えておくことで、停電時にも照明や通信などに関わる最低限の電力を確保できます。

耐久性の高い設備を選べば、発電効率の低下や周辺地域への二次被害のリスクを抑えながら備えることが可能です。

また、台風地域向けのシャッターなどを取り入れることで、風による吹き込みや飛来物による被害を防ぐことができます

上記はあくまで一例であり、オフィスや公共施設の用途や立地などによって必要となる設備やシステムは異なります。

こうした「アクティブデザイン」は、建物の基本となる「パッシブデザイン」と組み合わせることで、

災害時の安全性を高めるだけでなく日常の快適性や省エネルギー運用にもつながる点が大きな魅力です。

敷地全体で備える雨や緑を活かした防災設計

防災というと、頑丈な構造や非常用電源など“建物の中”に目が行きがちですが、実は、敷地の外まわりこそが建物を守る最前線になることもあります。

たとえば、屋根の形や勾配を工夫して雨水を集め、貯留タンクに導く設計が有効です。

停電時には非常用水としてはもちろん、平時には植栽の水やりや打ち水などにも活用できます。

「ためて使う」仕組みは、排水負荷を減らして地域の浸水リスクを和らげることにも繋がるでしょう。

また、建物や外構フェンス、植栽などの配置を工夫することで風の加速を抑えることができます。

たとえば、風の通り道に緑や壁などを適度に配置し、風の勢いをやわらげるような設計を取り入れると効果的です。

こうした外構に関する計画は、見た目の印象を変えたり快適性を高めたりするのに加えて、「防災設備」としても機能し得るのです。

国の政策も“パッシブ+再エネ”へ。時代に合わせた設計をご提案します

防災という言葉から“特別な施設”を想像される方も多いと思います。

しかし、パッシブデザインの魅力は、日常の快適性そのものが災害時の強さにつながることにあります。

自然光がたっぷり入る建物は、停電時でも暗くなりません。

風が通る建物は、空調が止まっても熱がこもりにくくなります。

その“心地よさ”こそが非常時に人を守る力になります。

防災を「備えること」ではなく「日常に組み込むこと」が、これからの設計のスタンダードになっていくのではないでしょうか。

なお、環境への適切な配慮がなされる太陽光施設などには、国や各自治体も積極的に補助しています。

新築だけではなく、既存の建築物のリノベーションなどに活用できる補助金などもあります。

時期や地域などにより内容は異なりますので、気になる方は信頼できる設計事務所などに相談してみると良いでしょう。

エネルギーコストの削減や事業継続性の確保を、災害対策と同時に実現できる選択肢は多くあります。

地域から長く愛される建築物をお考えの方、建物を大切に活用していきたいというご希望をお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。

費用や補助金、建築のアイディアなどについて、お考えを丁寧に伺いながらこれまでの経験をもとに一緒に最適なかたちを考えてまいります

なお、災害時に備えるだけでなく、自然の力を借りて快適に過ごすために欠かせない「パッシブデザイン」については、以下の記事でも詳しくご紹介していますので、ぜひあわせてご覧ください。