増えるクマ被害にどう備えるか?建築の視点から考える環境変化への対応とは


近年、クマの出没ニュースが相次いでいます。

環境省によると、令和5年度には東北地方でブナの実が大凶作となり、その秋にはクマの出没件数が過去最多を記録しました

また、同年4月から翌年1月までの人身被害は200件近くに上り、過去最多のペースでした

山に食べ物が不足したことで、エサを求めて人里へ下りてくるケースが急増したと考えられています。

これは人間の生活圏と自然環境の境界が揺らぎ、都市や集落がその影響を強く受けていることを示しています。

公共施設や企業の建物も例外ではなく、利用者の安全や事業活動の安定性に直結する課題といえるのです

だからこそ建築においても、人の安全を守りつつ、自然と無理なく距離をとるための施策が求められています

本記事では、「建築を通してどのように人間の安全な暮らしを支えていけるのか」について具体例も交えてご紹介します。

クマなどの野生動物との境界をつくるための建築的アイディアとは?

様々な方法がある中でも、ここでは代表的な3つの方法を紹介します。

1. 緩衝地帯の整備

街や建物とその外側の境界に緩衝地帯を設けることは、クマをはじめとする野生動物の侵入リスクを減らす基本的かつ有効な手段です

例えば、電気柵の設置や水辺・緑地帯の整備といった対策を組み合わせることで、動物が近づきにくい環境をつくり出せます。

土地の高低差や既存の水路といった条件を読み込んで設計すれば、人工的な柵に過度に頼らなくても“地形を活かしたバリア”を構築できるかもしれません。

また、照明や通信機能の付いた監視カメラなどを組み合わせることで、利用者の安心感をより高めることも可能です

こうした緩衝地帯を自治体や施設、工場などの外縁部に整備することは、従業員や住民の安全確保と同時に、事業継続リスクの低減にも直結するでしょう

2. ゴミの保管体制と設備の強化

クマの市街地侵入の多くは、「食べ物の匂い」によって引き寄せられることが原因です。

効率良く食物を確保できることを学習することで、出没回数が増える危険性が高まるともいわれています。

そのため、飲食店や宿泊施設などにおいてはゴミの保管庫を導入し、施錠を徹底することが基本です。

また、周辺の照明・視認性に配慮した設計を取り入れることで、維持管理の負担を抑えつつ安全性を高めることが可能です

建築的な工夫と運用管理を一体的に計画することで、企業や自治体にとっての安心・安全が確保されやすくなるでしょう

3. 植栽の選定

建物の周囲にクマが好むクリやカキなどの果樹を配置することは、意図せず誘因することにつながります

そのため、植栽計画の段階からリスクを意識した選定が重要です。

また、公園や公共施設などでは、低木の配置や高さを調整して見通しを良くすることで、野生動物が身を潜めにくくなり、侵入を抑制しやすい環境を整えられます

動線計画や視認性の確保とあわせて植栽を選定することで、利用者の安全と快適性を高められるでしょう。

経験豊富な一級建築士に相談することで、施設の用途や運営方針に沿った計画を立てられ、

突発的なトラブルや余計な管理コストを未然に防ぐことができます

野生動物による被害を防ぐことはコスト削減に

野生動物の侵入や被害は、単なる一時的なトラブルにとどまりません

建物や設備の修繕費、商品の廃棄、操業停止などによる損失が発生するケースもあります

こうしたリスクを未然に下げることは、「安全を守る投資=長期的なコスト削減」につながります。

建築段階から緩衝地帯や廃棄物の管理、植栽への配慮を取り入れることは、経済的にも合理的な選択といえるのです。

補助金や制度を活用した取り組みの活用も

国や自治体では、鳥獣被害対策を進める地域や事業者を支援する制度が整えられています

たとえば農林水産省の「鳥獣被害防止総合対策交付金」や、各自治体独自の補助金制度などです。

これらは農業分野での活用が中心ですが、公共施設や企業が行う対策に応用できる可能性もあります。

補助金については地域や期間によって活用できるものが異なるため、詳しい一級建築士事務所などの専門家に相談することをおすすめします。

安心・安全と事業の持続性を守るために建築にできること

クマの出没は、私たちの生活圏と自然環境の境界が揺らいでいることを象徴しています

そして、クマ出没の背景にある温暖化は今後さらに進行する見通しです。

その中で建築士は「自然と都市の境界をデザインする存在」として、地域社会の安全と暮らしを守る役割を担っています

「長期的なコスト削減」や「地域社会からの信頼向上」を叶えられるような建築を、これまでの経験も踏まえてご提案いたします

補助金制度を活用した具体的な計画のご相談も承っておりますので、どうぞお気軽にお声がけください。

また、当事務所のブログでは、温暖化対策としての「カーボンニュートラル」についても記事を掲載しています。

コストパフォーマンスに優れた方法なども含めて、建築が果たせる役割を具体的に解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。