建物の湿気対策は設計で変わる!梅雨時期に差がつく空間づくり
雨が続く梅雨の季節に、ビルや施設などの建物内が「なんとなく蒸し暑い」「においがこもる」といったお悩みを抱える方も多いのではないでしょうか。
また、梅雨の時期は足元が悪くなり転倒などの思わぬ怪我のリスクも高まるといわれています。
雨で濡れた通路などでの転倒について、厚生労働省はビルなどの商業施設や公共施設も含めて対策が必要であると注意喚起しています。
そこで、今回は湿気や結露、空調の悩みの解決はもちろん、より安全かつ快適に過ごすための建物づくりの工夫をまとめました。ぜひ最後までご覧ください。
梅雨の季節を快適に過ごすための設計の工夫”5つ”

公共施設やオフィスなどで取り入れたい設計アイディアについて5つご紹介します。
1. 自然の風を味方につける”通風設計”
2. 湿気を吸ってくれる“調湿素材”
3. 雨の日も安全・快適な”エントランス”
4. “緑の力”で蒸し暑さを緩和
5. “空調・換気”を自動制御
雨が続く季節も快適さを保つためには、設計の細やかな工夫が大切です。
働きやすさや建物の管理のしやすさにも繋がる5つの方法を、具体例とあわせてお伝えします。
1. 自然の風を味方につける”通風設計“
空気がこもりやすく、室内に不快感が残りやすくなる梅雨の時期に効果を発揮するのが、自然の風を取り込む「通風設計」です。
代表的な手法の一例は以下の通りです。
・窓を対角線上などに配置することで、空気の通り道を確保する
・中庭や吹き抜けを設けて、建物全体の風の流れをつくる
通風設計は、建材の腐食を防いで長持ちさせることや日々の光熱費の削減にも貢献します。
コスト面やサステナビリティの観点からもメリットがあるので積極的に取り入れたいものです。
新築はもちろん、改修によって導入することも可能です。
2. 湿気を吸ってくれる“調湿素材”
壁や天井などに調湿素材を使用するのも有効な対策のひとつです。
たとえば「木材」や「珪藻土」などの素材は、空気中の湿気を吸収・放出する性質を持っています。
特に、会議室やトイレなど湿気やにおいがこもりやすい空間に取り入れることには以下のようなメリットがあります。
・カビや結露のリスク抑制
・気になるにおいの軽減
快適な室内環境を維持するために、機能性とデザイン性を兼ね備えた調湿素材の導入はぜひ検討したいポイントです。
また、木製のインテリアなどを配置することで、室内の湿度をより一定に保ちやすくなります。
家具の設計〜製造まで一級建築士に任せられるケースもあるため、ご希望に応じて相談してみることをおすすめします。
3. 雨の日も安全・快適な”エントランス”
梅雨の季節は、室内への雨水の持ち込みによって施設の安全性や清潔感が損なわれやすくなります。
特にエントランスはすべての来訪者が通る場所であるため、転倒防止のためにも安全面に配慮した設計が求められます。
利用者にも管理者にもやさしい設計のアイディアには、例えば以下のようなものが挙げられます。
・傘に付着したしずくによる転倒を防ぐための、滑りにくい床材の採用
・雨風の吹き込みを防ぐキャノピーや風除室の設置
・傘袋スタンドや傘立てを設置できるスペースの確保
エントランスの設計の工夫は、建物全体の印象を左右するだけでなく、運営効率や利用者満足度の向上にもつながるでしょう。
4. “緑の力”で蒸し暑さを緩和
梅雨から夏にかけての蒸し暑さ対策として、屋上や外構などの緑化も効果的です。
植物が水分を空気中に放出する「蒸散」によって周囲の気温を下げる効果が期待できます。
特に、コンクリートに囲まれた都市部のオフィスビルや公共施設などでの導入は、建物周辺の環境改善に止まらずヒートアイランド現象の緩和にもつながります。
具体的な緑化の方法や効果には以下のようなものが挙げられます。
・屋上緑化(ルーフガーデン):断熱や空調負荷の軽減
・壁面緑化:建物外壁の温度上昇の抑制
・外溝や中庭の植栽スペースの緑化:建物周辺の温度上昇の抑制
緑化は利用者や従業員へ視覚的なリラックス効果をもたらすという点もメリットといえるでしょう。
そのため、建物イメージの向上も期待できます。
植物の管理もリフレッシュ効果が期待できるため、可能な範囲で取り組んでみるのも面白いかもしれません。
5. “空調・換気”を自動制御
近年は、建物や部屋の利用状況などに応じた、省エネかつ快適な室内環境づくりが可能になりました。
人感センサーや温度・湿度センサーにより、空調・換気設備を以下のように自動制御するシステムが普及しています。
・湿度が一定以上になると自動的に除湿運転に切り替わる
・人がいない時間帯は稼働しない
執務スペースや会議室、エントランスなど、各部屋の用途に合わせて細かく設定できる点も大きな特長です。
利用頻度が高い部屋、湿気がこもりやすい場所などに合わせて設定を変更することで、省エネと快適性を両立できます。
設計で梅雨対策を始めることで、年中快適な建物に
湿気対策というと、設備の後付けをイメージしがちですが、設計の工夫で快適さは大きく変わります。
通風、素材、緑化などを考慮した建物づくりをすることで、梅雨の時期も心地よく過ごすことが可能です。
一級建築士事務所であるスギウラ・アーキテクツでは、 年間を通した快適性や機能性の高さはもちろん、管理や運用のしやすさなども考慮した設計をご提案します。
梅雨の湿気対策をはじめ、空間づくりでお困りのことがあればどうぞお気軽にご相談ください。
梅雨の季節もより元気に過ごしやすい空間を、ぜひ一緒にかたちにしていきましょう。