クマと遭遇した時の対処方法は?建築に加えて運営の工夫も解説
昨今、クマの出没は他人事ではなく、実際に
「駐車場で鉢合わせした」
「ごみ置き場が荒らされた」
といった事例が様々な都市で報告されています。
もし実際にクマと出会ってしまったら、どう行動すべきでしょうか。
利用者や従業員を守るためには、建築の工夫はもちろん、遭遇時の具体的な対応や日常運営に落とし込める仕組みも必要です。
本記事では、環境省などの指針を踏まえた実際の行動方法から始め、
経営者にとって重要な信頼性に直結する建築・運営の工夫や補助金について解説していきます。
クマに万が一遭遇したときに取るべき行動とは?

環境省や自治体が示す行動指針では「背を向けず、落ち着いてゆっくりと後退する」「大声を出したり走ったりしない」といった基本が挙げられています。
また、登山の現場ではクマ鈴や撃退スプレーなども広く使われており、一定の効果が報告されています。
場合によっては施設でも備蓄や配備を検討する価値があるかもしれません。
こうした備品を収納し、必要な時にすぐ取り出せる動線づくりも大切です。
しかし、まずは利用者や従業員に「出会ってしまったときの基本的な対応」を周知するとともに、危険性のあるところに掲示するなどの対策も有効だと考えます。
出没リスクを減らすための運営設計も大切

クマの出没リスクを低くするためには、外周の柵や植栽といった建築そのものの工夫が欠かせません。
加えて、実際の被害を減らすためには日常の運営と建築デザインを結びつけることも重要です。
クマの出没は基本的には早朝や夕方に集中しており、駐車場や搬入口といった人の気配が薄い時間帯・場所に被害が起こりやすい傾向があるようです。
そのため、照明の点灯時間を工夫したり、通路や園路を見通しのよい配置にしたりするだけでも、クマが近づきにくい環境を生み出せるでしょう。
また、ごみの収集・保管の工夫も安全を左右します。
施設の設計では“ごみ置き場をどこにどう配置するか”という視点も持ち合わせておくと、運営上の負担を増やさずに安全性を高めることが可能です。
なお、新築だけではなく改修でも安全性を高める工夫は十分可能です。
運営面に関しては、保管庫を施錠して匂いを外に出さないようにすれば、クマが「食べ物がある」と学習するリスクを大きく減らすことが可能です。
“守る”だけでなく“魅せる”デザインも可能

外構計画における材料や植栽の選定により、安全性だけでなく景観性や維持コストの軽減を叶えることも可能です。
例えば、ゴミ保管庫の素材ひとつをとっても、クマが破壊しにくい鋼材や厚板を使えば初期投資はやや上がりますが、修繕頻度を大幅に減らせるでしょう。
最近は鋼材でもデザイン性に優れたものも多く、企業のブランドイメージや公共施設の景観を損なわずに導入できるのも利点です。
植栽については、クリやカキなどの果樹を避けることに加えて見通しを良くする低木の配置も基本です。
また、樹種の工夫によって安全と快適性を両立させることも可能です。
例えば、ヒノキやスギなどは誘引リスクが低いうえに、日本らしい景観を演出します。
材料や植栽の工夫はリスクを下げるだけでなく、長期的に見れば施設運営の効率化やイメージアップにつなげられます。
個別に具体的な方法を知りたい方や安心して進めたい方は、経験豊富な一級建築士事務所へ相談するのがおすすめです。
補助金なども活かした経済性と安全性を両立させる設計
安全対策への取り組みは、国や各自治体の補助金制度を利用できる場合があります。
例えば、国や自治体の補助金は防護柵や監視カメラの設置、地域全体の安全確保を目的とした環境整備に適用できるケースがあります。
事故リスクを下げる取り組みは、保険会社の評価によって掛け金の見直しにつながる場合があり、長期的な固定費削減の可能性もあります。
野生動物による被害は、一度起きてしまうと修繕や補償にかかる費用だけでなく、操業停止による売上機会の損失や顧客離れなどの経済的影響を及ぼしかねません。
安全性と経済性を両立させた設計・運営により、被害を未然に防ぐことがこれからの建築設計に求められる姿勢といえるのではないでしょうか。
建築と運営の両面からのクマ対策のサポートはお任せください
クマの出没は一過性のニュースではなく、温暖化や生態系の変化により今後も続くリスクです。
建築士に求められるのは、建物そのものの設計にとどまらず、
自然との境界をどうデザインし、人々の安心や経営の持続性を守るかなどの広い視点だと考えています。
遭遇時の行動指針の共有、材料や植栽の選び方などの工夫、出没リスクを踏まえた運営設計を重ねることで、安全性の向上とコスト削減を同時に実現できるでしょう。
弊社は一級建築士事務所としてこれまでの経験や知識を活かし、都市と自然が隣り合う環境にふさわしい安全設計をご提案いたします。
安心・安全と事業の持続性を両立させる建築計画についてお悩みの方は、どうぞ弊社スギウラ・アーキテクツまでお気軽にご相談ください。
なお、緩衝地帯の整備などの具体的なクマ対策については、前回の記事で解説しています。
より全体像をご理解いただけるかと思いますのでぜひ参考にしてみてください。