サグラダ・ファミリアに学ぶ、受け継がれる建築の条件とは?
スペイン・バルセロナにある世界遺産のサグラダ・ファミリアについて、最も高いメインタワー「イエス・キリストの塔」は2026年に完成することが発表されました。
2026年は設計者であるアントニ・ガウディの没後100年という節目も重なり、世界中の注目が集まっています。
なお、正面入口となる「栄光のファサード」などの建設はまだ残っており、全体が完成する目処は2034年ごろだといわれています。
サグラダ・ファミリアは、年間470万人以上が訪れる言わずと知れた世界的な観光名所です。
日本からも毎年10万人以上が足を運んでいるといわれています。
本記事では、そんなサグラダ・ファミリアの魅力に迫りながら、
「なぜ完成までに140年もの歳月を要したのか」、「ガウディが亡くなってから、どのようにして建設が続けられてきた」などに注目し、
建築において大切にすべき本質を紐解いていきます。
140年の時を経てサグラダ・ファミリアの進化と完成へ

サグラダ・ファミリアは1882年に着工し、現在も建設が続いています。
設計を手がけたガウディは、自然の摂理を建築に積極的に取り入れ、美しさと実用性を両立した独自の思想を築きました。
細かな造形や曲面構造、光の取り入れ方に至るまで、すべてに意味を持たせた設計は見る人の心を動かし続けています。
また自然の法則に抗うのではなく、それを読み解き、活かすことで建物全体の安定性も保たれています。
設計を担当したガウディが亡くなった上に、サグラダ・ファミリアの図面は存在しません。
それにもかかわらず、140年以上もの歳月をかけて建設が続けられてきたことは奇跡的なことのように思えるかもしれません。
設計者の哲学が現場で共有され職人たちが実践してきたからこそ、サグラダ・ファミリアは今もつくり続けられています。
中でも、彫刻や装飾を担う職人がガウディの意図を深く読み取り、形にしてきたことは建築の核といえます。
ガウディ自身、職人や技術者への深い敬意を持ち、対話を重視しながら空間をつくり上げていました。
そうした姿勢があったからこそ、設計思想は現場に浸透し140年間も受け継がれていったのだと考えられます。
また、近年では、3DプリンターやCNC加工機などの最新技術が導入され、
従来は多くの時間を要した曲面や幾何学的な装飾も、精緻かつスピーディーさを増して施工できるようになりました。
技術革新が進んだことにより、かつては2200年頃の完成とも言われていた工期が大幅に短縮され、完成が現実的な目標として見えてきています。
ガウディに学ぶより良い設計のための自然や人との“対話力”

自然や人から学び、誠実な姿勢で建築に向き合い続けたガウディの在り方には、設計に携わる者としてあらためて考えさせられるものがあります。
実際の、バルセロナ北部にある世界遺産のグエル公園の設計に、
傾斜面に自然に生えている木をなるべく切らずに、注意深く観察しながら根っこをまたぐかたちで道を作ったなどという逸話があります。
こうしたガウディのやり方は、環境との調和を重んじることはもちろん、より本質的な空間の可能性を導き出そうとした姿勢が現れているのではないでしょうか。
エビデンスや設計根拠が厳しく求められる現代では、こうした柔軟かつ実践的な現場対応は容易ではありません。
だからこそ、その思いに触れるたびに設計の原点を忘れずにいたいと感じます。
また、現場での対話はもちろん、建築主が思い描く理想や使い方に耳を傾け、
話を重ねながら本質を見極め、かたちにしていくプロセスは設計者の本分だと感じます。
コストや納期の制約、複雑化する法規制などにより、設計に求められる条件はますます厳しくなっているのが現状です。
それでもなお、与えられた要件を丁寧に捉え、現実的かつ誠実に設計へと結びつけていくことで、喜んでもらえる建築が生まれていくのだと思います。
技術力はもちろん想いを形にする建築もおまかせください
2026年には、ガウディが生前に構想したサグラダ・ファミリアの「イエス・キリストの塔」がいよいよ完成を迎える予定です。
サグラダ・ファミリアが時代を超えて人々を惹きつけてきたのは、
ガウディが自然や人との関係に真摯に向き合い、その哲学を空間の細部にまで丁寧に落とし込んできたからだと感じます。
「どうすればこの空間が人にとって本当に豊かなものになるのか」を問い続けたその姿勢には、現代の建築士として学ぶべき点が多くあります。
私自身も、建築主様や利用者様の想いを丁寧に受けとめ、想像しながら、誠実かつ現実的に最適なかたちを見出すことを大切にしています。
空間が長く愛され、使う人の未来に寄り添えるものとなるように、建築主様と一緒に理想をかたちにしていきます。
これまで手がけてきた建築事例は動画でもご紹介しておりますので、ぜひあわせてご覧ください。