エアコンだけじゃない!設計で熱中症に備える方法とは
ここ数年、夏の暑さは“我慢”の域を超え、熱中症による救急搬送が増えています。
屋内でも油断は禁物で、厚生労働省なども注意を呼びかけています。
また、2025年6月より職場における熱中症対策が義務化されたこともあり、
企業の社会的責任や労働環境への関心が高まっている方も多いかもしれません。
熱中症対策にあたっては、記録的な暑さが続き環境への負荷も懸念される昨今では
「エアコンを使うだけ」では限界があり、建築の力で安全性と快適性をどう高めるかも重要視されています。
そこで、本記事では具体的な対策を補助金活用の視点も交えてご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
快適で安全な建物とは?熱中症対策の一例を紹介

風などの自然エネルギーを活かす設計は、運用効率の向上や環境負荷の軽減に欠かせません。
長年にわたり活用されてきた手法と最新技術を融合させた、熱中症対策の具体例をご紹介します。
日射を遮蔽する
庇(ひさし)や外付けブラインドなどで日差しを遮ることで、室温をコントロールすることができます。
熱は室内に入る前に遮ることが重要であり、冷暖房機器の負荷を抑えるうえでも非常に効率的です。
また、日本建築の特徴である深い軒(のき)や縁側空間なども、屋外と室内の間にワンクッションを設ける工夫として評価されているのです。
特に縁側空間は、オフィスなどでももっと取り入れられてもよいと考えます。
室内と屋外をつなぐ空間として、オフィスではリフレッシュスペースやカジュアルな打ち合わせの場として取り入れられている例もあります。
戸建てをリノベーションして縁側空間を生かすほか、
ビル内のオフィスでも窓際に外を眺められるようなスペースを設けることで縁側のような雰囲気を演出することが可能です。
縁側のような空間は「自然と足が向くような、居心地のよいオフィスづくり」にも寄与すると考えています。
断熱性能を強化する
夏の暑さは窓などの開口部から入りやすいため、 窓やドアの断熱性能を高めることは非常に効果的です。
たとえば、Low-E複層ガラスなどの断熱性能の高いガラスへの交換は冷暖房効率の改善に大きく寄与します。
また、和紙障子などの伝統的な要素も、現代技術と融合させることで断熱性能を発揮します。
和紙障子は調湿性や通気性などにも優れている上に、空間にやわらかさや穏やかさを演出する素材としても重宝され、
ホテルのラウンジや会議室、図書館などでも採用されています。
通風・自然換気を促す
風の通りを意識した間取りや開口部の配置により、こもった熱気を自然に逃がすことが可能です。
具体的には南北や東西の両方向に開口部を設けて風の抜け道をつくる、
あるいは吹き抜けや階段室を活用して縦の空気の流れをつくるといった工夫により、空気の循環が生まれ熱が滞留しにくくなります。
木材などの調湿性・蓄熱性に優れた自然素材を併用することで、通風による温度変化の緩和にもつながり、より身体にやさしい空間づくりが可能です。
水分補給体制を整備する
ビルや公共施設では給水ポイントや自動販売機、冷蔵庫などを設置できるスペースを確保することが、熱中症対策として有効です。
特にエントランスや共用部などの人の動線上に設けることで、日常的な水分補給はもちろん、緊急時の冷却対応などにも役立ちます。
水分摂取の重要性は環境省や厚生労働省からも繰り返し強調されており、建物の快適性・安全性を高めるカギにもなるでしょう。
また、こうした配慮は企業の労働環境改善や欠勤リスクの軽減、建物の利用者満足度の向上にむけたメリットのある投資だと考えます。
補助金制度の活用も視野に入れた、現実的な熱中症対策のすすめ方

熱中症対策の多くは、建築主にとって「追加コスト」に思えるかもしれません。
しかし、熱中症対策は国や自治体の補助制度と相性が良く、支援の対象となるケースも多く存在します。
たとえば以下のような取り組みは、制度活用の対象となることがあります。
・断熱材の追加や開口部の改修
・木材の利用による設計
・外構における遮熱性舗装や緑化の整備
・高効率な空調設備(冷暖房設備)の設置
建築計画と制度をうまく組み合わせることで、コストを抑えながら実効性のある対策を無理なく進めることができます。
補助金制度は申請のタイミングや条件によって内容が異なるため、早い段階で一級建築士にご相談いただくことが、活用の第一歩になります。
暑さに負けずに快適に過ごせる空間作りは
スギウラ・アーキテクツまでご相談ください
暑さが本格化するこれからの季節、室内での熱中症対策も大切なテーマになってきます。
スギウラ・アーキテクツは設計者としてできる熱中症対策を建築主様と一緒に考えてまいります。
新築はもちろん、既存の建物の改修によって快適性を高めるご提案も可能です。
設計アイディアや費用感について気になる方も、どうぞお気軽にご相談ください。
暑さが続く季節だからこそ、心地よく安心して過ごせる空間づくりについて現実的な方法を寄り添いながらご提案いたします。